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【取材日記】vol.10 テムザック社長・高本陽一さん

投稿日時:2006/12/20(水) 15:15rss

 取材日記は「月刊 経営者会報」編集部員が、おもに中小企業の経営者の方への取材を通じて、感銘を受けたこと、ユニークな取り組みだと感じたことなどを綴るコーナーです。
 今回は、経営者会報12月号の連載記事「異能経営者がゆく!」で取材させていただいた、テムザック社長・高本陽一さんにまつわるエピソードをご紹介します。

     ◇     ◇     ◇ 

 経営者によって、起業の動機はいろいろあるでしょう。とはいえ、普通は、己の高い欲求を満たすべく、意欲に満ちて事業を起こすのが普通です。しかし、北九州市でロボット開発を続けるテムザックの高本社長の場合、少し違いました。
 
てむざっく

 もともと高本商会(現テムス)という、おばあさま(!)が創業した会社の三代目で、食品生産工場のベルトコンベアーやラインを作っていた高本さんが、十年ほど前、業績好調で社屋を新築する際に、玄関先に案内用のロボットを作ったのがそもそもの始まりでした。
 
 来客があると走り寄ってきて案内するこのテムザック1号は、地元で話題になり、多くのメディアが取材にやってきます。テレビで同社のロボットを知ったある人物からオーダーが入り、もう一台つくるとこれがまたテレビに出てしまう。
 
 「会社の技術力の宣伝になればと思ったのに、ロボットばかりが有名になってしまった」と高本社長はおっしゃいます。これをきっかけに、福岡県から強くプッシュされて、気が付くとたくさんの出資者が集まり、ロボット専業にやる会社・テムザックが立ち上がってしまったのです。中途半端にはやれないと、本体であるテムスは、お父様に返り咲いていただいたそうです。
 
 同社のロボットの特徴は、あくまで実用性があること。留守番機能に特化したロボット『ロボリア』などすでに一般向けに販売され、ヒット中の製品もあれば、災害現場での活躍を期待される『援竜』など、多岐にわたります。
 
 とはいえ開発は大変。その間を支えたのは、実は、高本さんの優しさです。病気がちだった奥様が、群馬のご実家のご両親を心配していたにもかかわらず、なかなか帰省できないため、遠く離れても様子がわかったり、留守番ができるロボットを開発しようと決め、「番竜」を開発。この番竜の基本性能に絞って開発したのがロボリアでした。
 
 しかし、ことしの春、奥様は亡くなられてしまいます。いま、ロボリアは奥様のご実家に贈られ、一人残っておられるお義母様は、大変喜んでおられるとのこと。「かみさんは亡くなってしまったけど、彼女が望んだロボットは残りました」(高本社長)。
 
 おもちゃのようなロボットではなく、あくまで人の役に立つロボットを作る──そんな高本さんの言葉の陰には、こんなエピソードがありました。きっと、これからも、その信念が揺らぐことはないでしょう。
 
     ◇     ◇     ◇ 


■テムザック http://www.tmsuk.co.jp/
■関連記事が「月刊 経営者会報」12月号に掲載されています。

 (編集部・酒井俊宏)



keikai12
*「月刊 経営者会報」は中小企業経営者の皆様のためのブレーンです。詳細・ご購読に関しては http://www.njh.co.jp/njs/keikai.htm をご参照ください。

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