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【取材日記】vol.7 木の城たいせつ・創業オーナー山口昭さん

投稿日時:2006/06/28(水) 17:38rss

 取材日記は「月刊 経営者会報」編集部員が、おもに中小企業の経営者の方への取材を通じて、感銘を受けたこと、ユニークな取り組みだと感じたことなどを綴るコーナーです。
 今回は、経営者会報7月号の巻頭カラー記事「異能経営者がゆく!」で取材させていただいた、木の城たいせつ創業オーナーの山口昭さんにまつわるエピソードをご紹介します。

     ◇     ◇     ◇
 
 北海道へ行くと、本州や四国・九州では見られない、V字形の屋根をした堅牢な家を見かけます。
 その大半は、北海道夕張郡栗山町に本拠を置く、㈱木の城たいせつが手がけたものです。V字形の屋根で雪を地下の下水に流すという、雪下ろしの必要のない家(耐雪住宅)です。
 
 同社創業者の山口昭さんの人生は、常に挑戦の連続だったといいます。その一端を記しますと、
 
・雪下ろしの必要のない堅牢な耐雪住宅を開発し、それ一本に絞る
・すべてを自社でてがける直営施工を昭和40年代に実施
・冬場は休むのが当たり前だった北海道の建設業界で、作業時の雪や寒さ対策を施し、通年施工を可能にしたこと

 そのどれもが、一部同業者からのバッシングを浴びたといいます。
 
 こうした取り組みの根っこにあるのは、山口さんの北海道という土地、そこで暮らす人々への揺るぎない愛情です。
 
 北海道の人たちは一般に郷土愛が強いといわれます。開拓民の子孫が多いため、「自分たちで築いた」という意識が、他の府県よりも強いからだといいます。
 山口さんのお祖父様も、北海道開拓屯田兵だったそうですが、その影響が大きいのでしょう。
 
 同社では「地産地消」の理念を大事にしています。
 南方の木を使うより、寒さに適しているという考えと、輸送にかかるエネルギーが小さいことから、北海道の木しか使わないそうです。
 
 また、普通なら捨てられてしまう間伐材や小径木(しょうけいぼく)も、宮大工の伝統技術を使って組み合わせ、部材にしています。

きのしろ 
 
 さらに、削って出る木くずは、部材を乾燥させる際の燃料に使用する。非常に環境負荷の低い、生産体制を作りあげているのです。
 
 こうした取り組みが内外から注目を浴び、同社の工場を見学に訪れる海外の研究者、国内の工務店関係者があとを絶ちません。
 
 山口さんはこうおっしゃいます。
 「大量生産大量消費。それで人間は幸せになったのか」
 
 もちろん、商品・商材が地球をまたにかけて流通するから経済が発展するという考えには妥当性はあるでしょう。しかし、山口さんの問いかけは、今後の企業のあるべき姿として、傾聴に値すると思います。

     ◇     ◇     ◇ 

■株式会社木の城たいせつ http://www.kinoshiro.com/
■関連記事が「月刊 経営者会報」7月号に掲載されています

(編集部・酒井俊宏)


けいかい
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