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2006年09月27日(水)更新

【取材日記】vol.9 あらや滔々庵社長・永井隆幸さん

 取材日記は「月刊 経営者会報」編集部員が、おもに中小企業の経営者の方への取材を通じて、感銘を受けたこと、ユニークな取り組みだと感じたことなどを綴るコーナーです。
 今回は、経営者会報10月号の巻頭記事「異能経営者がゆく!」で取材させていただいた、あらや滔々庵の永井隆幸さんにまつわるエピソードをご紹介します。

     ◇     ◇     ◇ 

 老舗の暖簾や看板が邪魔をして、なかなか思うような改革ができず、じり貧状態に陥っているといった話はよく聞かれます。
 
 しかし、そもそも老舗とは何か。なぜ生き残ってこれたのか。絶えざる変革の歴史があったからではないかというのが編集部の考えです。
 
 ここでご紹介させていただく「あらや滔々庵」さん(以下あらや)は、石川県加賀市の山代温泉で指折りの名門旅館。客室数は20で、小規模ではありますが、伝統の加賀料理にオリジナリティを加味した食事と、ゆきとどいたサービスで知られる、ファンの多い宿です。
 
あらや玄関

 江戸時代初期に、加賀前田藩の支藩・大聖寺藩の藩主から山代温泉で愛用していた湯壺の鍵を預かり、「荒屋」(あらや)の屋号を下賜されて以来、代々、荒屋源右衛門を名乗り、いまの若き経営者・永井隆幸さん(34歳)で十八代目だそうです。
 
 山代温泉自体、日本でも有数の歴史を誇っており、行基上人が725年に発見したという伝説が残っています。あらやは、鎌倉時代初期にはすでに「半農半宿」だったといいますから、本当は十八代どころではないでしょう。
 
 早稲田大学商学部卒の永井社長は、ゼミで観光事業を学んだほか、他大学の観光学科の外部向けの授業も受け、大学卒業後は一年間、ホテル業の専門学校に学びました。意気揚々と地元へ帰った永井さんを待っていたのは、客足の途絶えた温泉街という重い現実でした。
 
 帰った年には阪神淡路大震災の影響で関西からの宿泊客が激減、翌年にはロシアの石油タンカー、ナホトカ号の事故で日本海が重油汚染。新鮮な魚貝が売り物の山代温泉は大きな打撃を受けました。
 
 永井社長は赤字に陥った旅館の建て直しに着手、ご病気がちだったお父上に代わって経営の指揮を執ります。
 
 まず業務の合間を縫って、50以上の全国の旅館を回り、理想の宿を模索したそうです。考えに考えて行き着いた結論は、「伝統ある温泉、日々、渾々と湧き続ける温泉へ感謝の気持ちを大切にすること」。源泉かけ流しを徹底するほか、お湯を楽しめるサービスを打ち出します。同時に、その気持ちを自分や社員の方々に言い聞かせ、お客にアピールするために、「あらや」から「あらや滔々庵」へと宿の名称を変更。「滔々」の二文字にその思いを込めたのです。立派なCIといえるでしょう。

 さらに、「お客様の要望を聞くのは大切ですが、聞き入れてばかりでは特長のない宿になってしまう」と考え、「まず自分が泊まりたい宿にする」ことに専念していきました。
 旅館では珍しい「ワインを飲める宿」という特長も、そうした永井社長の考えから打ち出されたもので、あらやでは100種類以上のワインを楽しむことができます。
 そして、かつて明治時代、有栖川宮が定宿にした離れを改装した「有栖川山荘」。ここには和風のバーラウンジを設けてあり、外国からの宿泊客などにはとくに好評です。こうした努力が奏功し、客室稼働率は大幅に上がって、土日祝日の予約は3ヶ月先まで埋まるまでに。

 その間、どんなに苦しくても、他の宿にありがちな、平日のみ女性客に限り何割引きといった価格設定はいっさい行わなかったといいます。それは、「何を見てとかいついらしたかで、お客様に不公平が生じるのは絶対に嫌だった」からだそうです。その言葉からは、老舗の矜恃が伝わってきました(下の写真は永井社長とお母様=女将さん、奥様=若女将さんです)。

あらや2
 
 永井社長は送迎車のハンドルも握るほか、食材を板場任せにせず、自分で近くの橋立漁港に買い付けに行き、有栖川山荘のバーではバーテンダーとしてお客を迎えることも少なくない。永井社長はこうおっしゃいます。
 
 「不易流行の言葉の通り、伝統を大切にしてその土台の上に新たな取り組みをしていけばどんな時代にも生き残っていけると思います」
 
 一昨年、永井社長は地元の商店と旅館の後継者や若手経営者とで、街作りを推進するNPO法人『はづちを』を設立しました。自社だけではなく、温泉街全体の活性化に取り組む永井社長を、陰ながら応援していきたいと思っています。

     ◇     ◇     ◇ 


■あらや滔々庵 http://www.araya-totoan.com/
■関連記事が「月刊 経営者会報」10月号に掲載されています

 (編集部・酒井俊宏)


経営者会報10月号
*「月刊 経営者会報」は中小企業経営者の皆様のためのブレーンです。詳細・ご購読に関しては http://www.njh.co.jp/njs/keikai.htm をご参照ください。

2006年09月27日(水)更新

【ブログピックアップ】京都工芸・寺田元さん

「ブログピックアップ」のコーナーでは、日々、経営者の皆さんの書かれたブログを雑誌「月刊 経営者会報」編集部員が拝見し、お薦めのブログをご紹介していきます。

 きょうのお薦めブログは京都工芸の寺田元さんです。「今週のお題」に答えてくださっています。
 
 *      *      *
 
妻は以前、京セラで勤務しておりました。
結婚する前の年の1年間は稲盛会長様の身近な部署にてその存在を
感じておりました。

結婚祝いにいただいた贈り物は家宝であることは当然のことでございます。

京セラフィロソフィーは素晴らしいものでその実直な稲盛会長様の創立時からの
想いがぎっしりと詰まっております。

続きはこちら
……http://makasetaro.keikai.topblog.jp/blog/102/10001895.html

 *      *      *
 
 寺田さん、いつも「お題」に答えてくださって、ありがとうございます。
 
 会員である経営者の皆様が、どのような方を尊敬しておられるのか、どういった点を見習っておられるのかは、読者にとって、会員の皆様の人となりを知るうえで大変参考になります。
 
 会員の皆様には、「お題」に関係なく、感銘を受けた人や尊敬に値する人についても、ときどき書いていただければ幸いです。
                          

 (編集部・酒井俊宏)

2006年09月26日(火)更新

【明大生との毎週一問百答】質問第24弾は、「経営者を志した瞬間」

経営者会報編集部の大西です。
いつも「明大生との毎週一問百答」にご協力をいただきまして、ありがとうございます。

いよいよ先週21日より、久米信行さんの明大・後期講義が始まりました。
前期と同じく、毎週木曜日の18:00スタート。
内容はますます実践的になりそうです。
ビジネス企画書を作成して、実際に関係先に持ち込む、
といったトレーニングも盛り込まれています。

こんなこと教えてくれる大学って、他にあるのでしょうか・・・。
簿記も知らずに金融機関に就職した20年前の自分を思い出し、
明大生のみなさんに、思わず嫉妬してしまいました(笑)。

さて、恒例の毎週一問百答ですが、今回も明大生以外の方から
質問が届いています。同じ商学部生ですが、慶応大学の4年生からです。

<質問>
なぜ経営者を志したのですか。転機となるきっかけがあったのでしょうか。

(慶應義塾大学 吉井千晴さん)



とてもシンプルですが、すべての経営者会報ブロガーにお聞きしたい質問ですね。

大変お手数をおかけしますが、質問にお答えいただく際には、
ぜひ、この記事にトラックバックを張っていただければと存じます。
外部の方からのコメントやトラックバックも原則として開放しておりますので、
学生さんはじめ、読者の方からのご意見もお待ちしております。

今週も熱い回答をお待ちしておりますので、何とぞよろしくお願い致します!

(経営者会報編集部 大西啓之)

2006年09月21日(木)更新

【今月のお題】■産学連携 わが社のやり方■(9月22日10月19日)

 「月刊 経営者会報」12月号で予定している記事にリンクするものです。産学連携というとちょっと重々しいですが、大学と協力、あるいはうまく使って自社の研究開発や販路開拓などに役立てたようなケースであればオーケーです。
 
 もしそうしたご経験があれば、ぜひブログで綴ってみてください。
 編集部の記事作成のヒントにさせていただくとともに、エピソードによっては取材をさせていただきたいと考えています。

*ご自身のブログでお書きになった方は、お手数ですが、該当する記事を、この記事に直接トラックバックくださるよう、お願いいたします。もちろん、コメントで「○月○日の記事に書きました」とお知らせ下さってもけっこうですが、皆様の記事を読みたい読者の方がすぐジャンプできますので、ぜひトラックバックでお願いします。

2006年09月21日(木)更新

【今週のお題】私が尊敬する経営者(9月29日~10月5日)

今週(9月29日~10月5日)のお題 
■私が尊敬する経営者■


 先週に引き続いてのお題です。 
 本田宗一郎、井深大、盛田昭夫、松下幸之助。現役の方では、やはり京セラの稲盛会長。以前、『月刊 経営者会報』で好きな著名経営者に関して読者アンケートを行ったとき、だいたいこんな方々のお名前が並びました。
 
 皆さんが尊敬する、あるいは好きな著名経営者はどなたでしょうか。
 その方のどういった点がお好きなのか、どのようなところを参考にしておられるのか、などなど自由にブログで綴ってみてください。
 
*書かれた場合は、該当する記事を、この記事に直接トラックバックくださるよう、お願いいたします。もちろん、コメントで「○月○日の記事に書きました」とお知らせ下さってもけっこうですが、皆様の記事を読みたい読者の方がすぐジャンプできますので、ぜひトラックバックでお願いします。
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